【特別コラム】晴海フラッグの法的立場は「新築?」「中古?」それとも「リノベ?」|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2019年7月3日 07時30分
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(画像は東京都都市整備局の資料から引用)  晴海フラッグ(HARUMI FLAG)は、東京都中央区晴海5丁目にある約13haの広大な敷地に建設される、5632戸の「分譲住宅・賃貸住宅」、「商業施設」、「保育施設」、「介護住宅」などから構成される新しい街で、完成すると1万2000人が住むとされています。  そのうち分譲マンション4145戸は、「シー・ヴィレッジ(SEA VILLAGE)」686戸、「サン・ヴィレッジ(SUN VILLAGE)」1822戸、「パーク・ヴィレッジ(PARK VILLAGE)」1637戸から構成。また高さでいうと、2棟の「超高層タワー(50階建)」と17棟の「板状棟(数階〜18階建)」に分かれています。  冒頭に掲げた完成予想図を見比べると分かるのですが、東京2020大会の時点では17棟の「板状棟」は完成しています。また2棟の「超高層タワー」は、東京2020大会の終了後に建設される予定です。  ◇東京都整備局「東京2020大会時の選手村」   http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/sensyumura/athletes_village  ◇東京都整備局「選手村の整備(大会後のまちづくり)」   http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/sensyumura  売主は三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、住友商事、東急不動産、東京建物、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、大和ハウス工業とまさに「オールジャパン体制」です。  そして「シー・ヴィレッジ」と「パーク・ヴィレッジ」の分譲マンションは2019年7月、「サン・ヴィレッジ」の分譲マンションは2019年11月から販売される予定です。 【■■建築工事のスケジュール】  さて、ここで質問です・・・。分譲マンションとしての「晴海フラッグ」の法的立場は、「新築マンション」「中古マンション」「リノベーションマンション」のうち、どれに相当するのでしょうか?  東京都都市整備局の報道発表資料「東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画について」によると、建築工事のスケジュールは次のようになっています。  ◇大会の前   2017年1月──建築工事に着手   2019年12月──選手村として必要な部分が完成  ◇大会の年   2020年1月〜12月──東京2020大会のために使用  ◇大会の後   2021年1月以降──改修工事、新築工事に着手   2024年度──事業完了  分譲マンションとしての「晴海フラッグ4145戸」は、東京2020大会のために使用される「数階〜18階建の低層〜中層棟」17棟、および東京2020大会後に建設される「50階建ての超高層タワー」2棟から構成されています。  このうち「低層〜中層棟」が問題です。2019年に完成し、2020年に使用され、2021年以降に改修されることになるマンションは、「新築マンション」「中古マンション」「リノベーションマンション」のうち、どれに相当するのでしょうか? 【■■「新築」「中古」「リノベ」の法的な定義】  新築マンションの定義は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(第2条2項)」、および「不動産の表示に関する公正競争規約(第18条1項)」に明記されています。  まず「新築マンション」とは、「建物が完成してから1年未満」で、「まだ、人が住んだことがないマンション」を意味しています。  それに対して「中古マンション」とは、「建物が完成してから1年以上」、または「過去に、誰かが住んだことがあるマンション」を意味しています。  この点、晴海フラッグの「中層〜低層棟」は、2019年に完成し、かつ2020年にオリンピックやパラリンピックに使用されることになります。よって、マンション購入者が入居する2024年前後には、「中古マンション」の資格を満たしているように感じられます。  さらに「1棟リノベーションマンション」とは、不動産会社が既存の「分譲マンション」や「賃貸マンション」や「社宅」などを1棟丸ごと購入し、リノベーション(修復・刷新)した後に分譲するマンションを意味しています。  この点、晴海フラッグの「中層〜低層棟」は、2019年に完成し、まず2020年にオリンピックやパラリンピックに使用されます。そして、2021年1月以降に「オールジャパン体制」の不動産各社によってリノベーション(修復・刷新)され、その後に買い主に引き渡されますので、「リノベーションマンション」の資格を満たしているようにも感じられます。  これでは、どう判断すればいいのか、迷ってしまいますね。 【■■法的に見て「立派な新築マンション」】  少し迷わせてしまったかもしれませんが、晴海フラッグの購入を検討している皆さんは、どうか安心して下さい。2021年1月以降に改修される晴海フラッグの「中層〜低層棟」は、法的に見て「立派な新築マンション」です。  東京都オリンピック・パラリンピック準備局のウエブサイトにある、「ご意見の募集(選手村の3Rについて)」には、次のような趣旨の説明文が掲載されています。 https://www.2020games.metro.tokyo.jp/taikaijyunbi/torikumi/facility/sensyu/boshu/index.html (1)選手村の宿泊施設(住戸換算で約3900戸)は、東京都が施行する市街地再開発事業において、民間事業者(マンションデベロッパー各社)が整備中の住宅棟を、一時借用して用意する。 (2)選手村は、一つの住戸に何人もの選手が泊まれるように、個室や小規模な浴室を複数配置した特別な仕様になる。そのため、給湯器などの設備や内装材などは、大会後に建設される分譲マンションへの転用が難しくなるゆえに、他の公共施設などでの転用、再利用を検討する(3R=廃棄物のリデュース「削減」、設備のリユース「再使用」、建材のリサイクル「再生利用」)。 (3)したがって、東京2020大会に際しては、まず住宅棟を構造躯体(スケルトン)の状態まで整備。その後に、選手村として必要な設備や内装を付加し、大会期間中に一時的に使用する。 (4)そして、大会が終わった後に、選手村として使用された設備や内装を撤去して、再び構造躯体(スケルトン)の状態に戻す。その後に、新築分譲マンションとして必要な工事を施して、きちんと完成させるという段取りになる。  これを要約すると、「選手村」としては2019年に完成し、翌2020年に使用されることは確かです。  しかしながら、分譲マンションとして完成するのは、今から3年以上経った2022年秋の予定になっています。それゆえに、法的には「中古マンション」や「リノベーションマンション」ではなく、「立派な新築マンション」ということになるのです。 細野 透(ほその・とおる)建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。 東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。