【特別コラム】新築分譲マンションの「価格と専有面積の奇妙な関係」|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2019年7月10日 07時30分
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 左上は、「新築分譲マンションの価格と専有面積の関係」を示した図です。また右上は、「東京都の新築分譲マンションを対象にして、価格と専有面積の推移」を調べた図です。この2枚の図を活用すると、「価格と専有面積の奇妙な関係」を把握することが可能になります。 ※編集部注 図が読み取りづらい場合は下記リンク先よりご覧いただくか、添付PDF画像をご覧ください。 新築分譲マンションの「価格と専有面積の奇妙な関係」.pdf http://u0u0.net/wQou 【■■①好景気時、②不景気時の説明】  図「新築分譲マンションの価格と専有面積」の縦軸は、「新築分譲マンションの住戸の平均価格」を意味しています。これに対して横軸は、「新築分譲マンションの住戸の平均専有面積」を意味しています。  価格と専有面積の関係を考えるとき、その基本になるのは、「①好景気時の矢印(青色)」と「②不景気時の矢印(青色)」です。  ①好景気時には、「分譲マンションの販売価格が上がり、専有面積も増えます」。これは直感的に理解できます。一方、②不景気時には、「価格が下がり、専有面積も減ります」。これも直感的に理解できます。 【■■③不思議な右矢印、④不思議な左矢印の説明】  ①と②は分かりやすいのですが、次に「③不思議な右矢印(青色)」と「④不思議な左矢印(青色)」になると、事情は一変します。  「③不思議な右矢印」は、「価格が変わらないのに、専有面積が増える」ことを意味しています。なにゆえに、このような不思議な現象が起こるのでしょうか。皆さんは、その理由が分かりますか?  回答──景気がいい時代に計画されたため、「専有面積を増やし」かつ「価格をアップする」方針になっていました。しかし、プロジェクトが進行する途中で景気が落ち込んだため、「価格のアップ」をあきらめて「据え置く」ことにしました。その一方では、マンションの建設工事が進んでいたために、「専有面積は増やしたまま」になりました。  その結果、「価格が変わらないのに、専有面積が増える」ことになってしまったのです。  次に「④不思議な左矢印」とは、「価格が変わらないのに、専有面積が減ってしまう」という、ユーザーにとっては迷惑なタイプです。  これは、景気が悪い時代に計画されたため、「価格をダウンし」かつ「専有面積も減らす」設計になっていました。しかし、プロジェクトの途中で景気が良くなったため、「価格のダウン」は撤回してしまいました。その一方で、マンションの建設工事が進んでいたために、「専有面積は減らしたまま」になりました。 【■■⑤バブル全盛期、⑥バブル崩壊期の説明】  次に「⑤バブル全盛期の矢印(朱色)」と「⑥バブル崩壊期の矢印(朱色)」です。  バブル全盛期には「価格だけが、一気に上がる」という、「昇り龍」に似た現象が観察されることになります。例えば東京都心では、1987年〜1991年には価格が一気に2420万円も高騰したにもかかわらず、専有面積はほぼ変わりませんでした。  その一方、バブル崩壊期には「価格だけが、一気に下がる」という、「降り龍」にも似た現象が観察されることになります。例えば東京都心では、1991年〜1993年には価格が一気に3400万円も暴落したにもかかわらず、専有面積はほぼ変わりませんでした。 【■■⑦バブル全盛期直前、⑧バブル崩壊期直後の説明】  最後に「⑦バブル全盛期直前の矢印(朱色)」と「⑧バブル崩壊期直後の矢印(朱色)」です。  ⑦バブル全盛期の直前には、「価格は上がるのに、専有面積が減る」という、異常な現象が観察されました。  これは、バブルの気配を嗅ぎ付けて「土地が急激に高騰し始めた」にもかかわらず、「その土地代をマンションの販売価格にそのまま反映させると価格が高くなりすぎる」と懸念。そのため「専有面積を減らす設計にした」結果です。  それゆえに東京都心では、1986年〜1987年には価格が1540万円も高騰したのに、専有面積が約5平方メートルほど減少するという、おかしな現象が観察されました。  続いて「⑧バブル崩壊期直後の矢印」です。この時期には、「価格は下がるのに、面積が増える」という異常な現象が観察されました。  これは、バブルの終焉を予感して「土地が急激に暴落」し始めたため、「専有面積を増やす設計が可能」になりました。その一方、マンションの販売現場では、「マンション価格を抑えなければ売れない」という心配がありました。  それゆえに東京都心では、1993年〜1995年には価格が760万円も下落したのに、面積が約7平方メートルほど増加するという、おかしな現象が観察されました。  なお、図「新築分譲マンションの価格と専有面積」は、私自信が2018年1月に描いたものです。 【■■「価格と専有面積の推移・東京都(1994年〜2018)」の説明】  記事冒頭の右上に掲載した、「価格と専有面積の推移・東京都(1994年〜2018)」と題する図は、長谷工総研のプレスリリース「CRI 2019年2月号特集レポート」に掲載された図の引用です。  ただしこの図は小さすぎるため、読み取れないかもしれません。その場合には、長谷工総研のプレスリリース自体を参照してください(以下にURL)。 https://www.haseko.co.jp/hc/information/upload_files/20190130_1.pdf  図は「都内23区」と「都内23区以外」に分かれているのですが、このうち「都内23区」に注目しましょう。これを図「新築分譲マンションの価格と専有面積」に示した①〜⑧までの8種類のパターンを応用すると、次のように説明することができます。  2014年「「平均価格約6000万円、平均専有面積約68.3平方メートル」         ↓     〔⑤ミニバブル的な傾向──価格だけが上がり、専有面積は余り変わらない〕         ↓  2015年「平均価格約6750万円、平均専有面積約68.1平方メートル」         ↓     〔②不景気時の傾向──価格が下がり、専有面積も減る〕         ↓  2016年「平均価格約6600万円、平均専有面積約66.0平方メートル」         ↓     〔⑤ミニバブル的な傾向──価格だけが上がり、専有面積は余り変わらない〕         ↓  2017年「平均価格約7090万円、平均専有面積約65.5平方メートル」         ↓     〔④不思議な左矢印的な傾向──価格がほぼ変わらないのに、専有面積が減ってしまう〕         ↓  2018年「平均価格約7150万円、平均専有面積約62.8平方メートル」  2019年の「新築分譲マンションの平均価格と平均面積」は、はたしてどのようなパターンになるのでしょうか? 細野 透(ほその・とおる)建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。 東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。