【特別コラム】長期優良住宅認定マンションが「絶滅寸前の状態」に|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2019年7月24日 07時30分
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 新築分譲マンションの「性能」を判断する手がかりになるのは、A「住宅性能表示制度」もしくはB「長期優良住宅認定制度」です。  このうちA「住宅性能表示制度」は「住宅品質確保促進法」に基づく制度です。そして以下の項目に「等級」を付けて判断します。  (1)耐震性能  (2)耐火性能  (3)耐久性能  (4)配管メンテナンス性能  (5)省エネルギー性能  (6)空気環境  (7)光・視環境  (8)遮音性能  (9)バリアフリー性能  (10)防犯性能  それに対してB「長期優良住宅認定制度」は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく制度です。そして以下の項目などが、「基準」を満たしているか否かを判断します。   (1)劣化対策     (2)耐震性   (3)維持管理・更新の容易性    (4)可変性   (5)高齢者対策    (6)省エネルギー対策   (7)居住環境    (8)住戸面積   (9)維持保全計画 【■■利用度が高い「住宅性能表示制度」、利用度が低い「長期優良住宅認定制度」】  このうち新築共同住宅では、A「住宅性能表示制度」はよく利用されています。そして平成29年(2017年)時点では、累計で12万3570戸に達しました。  これは新築共同住宅(新築分譲マンション、新築賃貸マンション、新築アパートなど)の24.5%を占めています。  その一方、B「長期優良住宅認定制度」はほとんど利用されていません。そのため平成30年(2018年)3月時点では、累計でもわずか2万251戸に過ぎません。  しかも、冒頭に掲げた図に示すように、新築共同住宅(新築分譲マンション、新築賃貸マンション、新築アパートなど)の中で、長期優良住宅が占める割合は、平成24年(2012年)以降、激減しています。  平成24年(2012年)   新築共同住宅の中で長期優良住宅が占める割合   4690戸(1.0%)  平成29年(2017年)   新築共同住宅の中で長期優良住宅が占める割合   1531戸(0.3%)  すなわち、「長期優良住宅」と認定された新築分譲マンションは、いわば「絶滅寸前の状態」といっても過言ではありません。  資料「国土交通省・長期優良住宅制度の現状」。   http://www.mlit.go.jp/common/001282357.pdf  資料「国土交通省・住宅性能表示制度と長期優良住宅制度の一体的な運用について」   http://www.mlit.go.jp/common/001282356.pdf 【■■不動産協会の分析】  「長期優良住宅認定制度」において、新築分譲マンションが低迷する理由を、不動産協会は次のように分析しています。  〔理由1〕長期優良住宅の制度について、お客様への認知度が低い。そのため、広告に記載する優先順位が低く、カットされる場合もある。  〔理由2〕長期優良が、以下の理由でお客様に訴求しない。     a─物件価格が上昇している中、購入者層にこれ以上の工事費アップを転嫁できない。1戸あたり約200万円アップとの試算もある。   b─長期優良住宅のインセンティブの要件が、足許に供給される共同住宅に合っていない。例えば、「長期優良の技術基準を充たすが、認定を取得しなかった都心タワーマンション」がある。これはまず、物件価格が1億円超だったため、フラット35の対象外になり、金利優遇が使えなかった。それに加えて、住戸面積が55平方メートル未満の住戸では、長期優良住宅の認定が取得できなかった。     c─中古住宅流通において、長期優良住宅が必ずしも評価されていない。実際に、中古住宅流通の大手2社にヒアリングしたところ、「社内のシステムでは長期優良住宅をそれ以外と区別していない」という回答だった。  〔理由3〕耐震等級2の取得は、工事費および住戸形状に悪影響を及ぼす。   a─長期優良認定を取得するための工事費アップは、1戸あたり約200万円との試算もある。    b─世帯構成の変化を受けて、面積要件(55m平方メートル)を守るのが難しくなっている。    c─建築費が上昇すると地権者への還元率が低下するため、「再開発物件」や「地権者との共同事業」では地権者が望まないケースが増えている。  〔理由4〕長期優良住宅認定の取得手続のために、事業スケジュールが2〜3週間くらい長期化する。  〔理由5〕長期優良住宅の「維持保全計画」と、分譲マンションの分譲時に策定する「長期修繕計画」は、共通する部分が多く二度手間になっている。  資料「国土交通省・長期優良住宅制度のあり方に関する検討会・共同住宅(分譲マンション)の実態」    http://www.mlit.go.jp/common/001266256.pdf 【■■国交省が「長期優良住宅検討会」を開催】    「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」は、平成20年(2008年)12月5日に成立し、平成21年(2009年)6月4日に施行されました。  その付則には、「政府は、この法律の施行後10年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と明記されています。  そのため、国土交通省住宅局住宅生産課は、「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会(座長・松村秀一東京大学特任教授)」を、平成30年(2018年)11月30日に発足させました。  そして2019年6月24日には、7回目の検討会を開催。「中間とりまとめ(案)」について議論したばかりです。 細野 透(ほその・とおる)建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。 東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。 ※編集部注 グラフが見づらい場合はこちらのPDFを御覧ください。