【特別コラム】スーモ「マンション人気ランキング」に漂うモヤモヤ感|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2019年12月26日 07時30分
no image
 多くの不動産ポータルサイトには、「新築分譲マンション人気ランキング」が掲載されています。  これは、新築分譲マンション欄に掲載されている、各物件ページへの「アクセス数」をもとに作成したランキングで、普通は毎日あるいは1週間ごとに更新されていきます。  「人気ランキング」は、マンションの購入を検討している人たちにとっては、最新のトレンドを把握するための重要な手がかりになります。  一方、マンション・デベロッパーにとっては、自社物件の「販売時期・販売価格・販売戸数」などを決定するための、1つの手がかりになります。 【■■5種類の不動産ポータルサイトを比較】  私は以下に示した5種類の不動産ポータルサイトを対象に、2018年および2019年の2年連続で、「新築分譲マンション人気ランキング」の出来栄えを採点してみました。  アットホーム社の「アットホーム(at home)」  ライフル社の「ライフルホームズ(LIFULL HOME'S)」  マンション大手7社の「メジャーセブン(MAJOR7)」  ヤフー・ジャパン社の「ヤフー不動産(Yahoo!不動産)」  リクルート社の「スーモ(SUUMO)」  このうちマンション大手7社とは、「住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス(50音順)」を意味しています。また「MAJOR7」とは、7社が共同で運営する新築マンション情報サイトを意味しています。  まず、私が2018年に行った採点結果を示しましょう。  レストランやホテルの評価で有名な「ミシュランガイド」は、「3つ星★★★」「2つ星★★」「1つ星★」方式になっています。それに準じて、「3つ星★★★」を最高点としました。  ◆2018年時点の新築分譲マンション人気ランキング採点表  「アットホーム」──2つ星半★★☆  「ライフルホームズ」──1つ星★  「メジャーセブン」──1つ星★  「ヤフー不動産」──採点不可能  「スーモ」──採点不可能  なぜこのような結果になったのでしょうか。その理由を詳しく説明しましょう。 【■■「アットホーム」の人気ランキングは「2つ星半★★☆」】  アットホーム社が運営する、「アットホーム」の「新築マンション人気ランキング欄」には、2018年時点で、驚くことに8種類ものランキングがありました。  「人気の新築マンションランキング」、「人気の沿線ランキング」、「高級マンションランキング」、「高層マンションランキング」、「総戸数ランキング」、「専有面積ランキング」、「小規模マンションランキング」、「掲載物件数の多い駅ランキング」です。  このうち、「人気の新築マンションランキング」は、「全国」および「首都圏」「近畿」「東海」「北海道・東北」「信越・北陸」「中国・四国」「九州・沖縄」という7地域に分かれ、この7地域はさらに「各都道府県ごと」に分かれています。  そして、「全国」「7地域」「各都道府県」とも、すべて上位30物件まで掲載されていて、情報量が極めて豊富です(なお、物件数が少ない県は、30物件に満たない場合もあります)。  以上のように、「アットホーム」の「新築マンションランキング」は、まさに“至れり尽くせり”に近い出来栄えです。よって「2つ星半★★☆」としました。 【■■ライフルホームズ」の人気ランキングは「1つ星★」】  ライフル社が運営する、「ライフルホームズ」の「人気の新築マンション・デイリーランキング欄」は、「全国」および「東京」「神奈川」「東海」「関西」など11地域に分かれています。  ただし「全国」では上位10物件が掲載されているものの、「東京」では上位6物件と数が減り、他の地域はわずかに上位3物件が掲載されているに過ぎません。このように情報量が不足しているため、「1つ星★」としました。 【■■「メジャーセブン」の人気ランキングは「1つ星★」】  大手7社が運営する、「メジャーセブン」の「人気マンションランキング」は、「全国」および「関東」「関西」「北海道・東北」「中部・東海」「中国・四国・九州」という5地域に分かれています。  ただ、「全国」「関東」「関西」では上位5物件だけを掲載、他の地域は上位3物件だけを掲載というように、かなり物足りない感じです。  その一方では、住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスという、影響力が高い各社の物件という事実に注目しなければなりません。  そのため「ライフルホームズ」と同じく、「1つ星★」としました。 【■■「ヤフー不動産」の人気ランキングは2018年時点で「採点不可能」】  ヤフージャパン社が運営する「ヤフー不動産」には、かつては、新築分譲マンション人気ランキング欄が存在しました。しかし、ある「事件」がきっかけになって、2018年時点では、人気ランキング欄は存在しませんでした。よって「採点不可能」としました。 【■■「スーモ」の人気ランキングも2018年時点で「採点不可能」】  リクルート住まいカンパニーが運営する、ウェブサイト「スーモ」の新築マンション欄には、「調査・ランキング」と名付けたコーナーがあります。このコーナーには、色々なコンテンツが掲載され、その代表例としては毎年発表される「住みたい街ランキング」があります。  しかしながら、「新築分譲マンション人気ランキング」に関しては、ウェブサイト「スーモ」には「7つの謎」があって、全体として “モヤモヤした何か”が漂っています。よって2018年時点では、「採点不可能」としました。 【■■「スーモ」と「7つのモヤモヤ」】  以下、「スーモ」の“モヤモヤした何か”について、詳しく見ていきましょう。    ❶モヤモヤ・その1  2018年版のウェブサイト「スーモ」を隅々まで眺めても、「新築分譲マンション人気ランキング」は、どこにも掲載されていません。「スーモ」といえば、誰もが認める不動産ポータルサイトの王者です。その王者がなぜ人気ランキングを掲載しないのでしょうか?  ❷モヤモヤ・その2  その一方、ウェブサイト「スーモ」では、新築分譲マンション欄に掲載された各物件の検索回数を、きちんと記録に残している気配がありました。いったい何のために、記録を残しているのでしょうか?(これは、モヤモヤ・その3と関係してきます)。  ❸モヤモヤ・その3  実は、情報誌『スーモ新築マンション関西版』には、ウェブサイト「スーモ」で得られた検索データを基にした、「スーモ検索ランキング」という欄があります。  この欄には「総合ランキング」という別名がついていますが、内容を確認すると、「アットホーム」や「ライフルホームズ」と同種の、「新築分譲マンション人気ランキング」であることに変わりはありません。  ウェブサイト「スーモ」で得られた検索データを、なぜウェブサイト「スーモ」に掲載しないで、わざわざ情報誌『スーモ新築マンション関西版』に転載しているのでしょうか?  ❹モヤモヤ・その4  ウェブサイトなら情報はフレッシュですが、情報誌に転載すると情報は「3週〜4週」の遅れになります。何のために、「3週〜4週遅れの情報」を掲載するのでしょうか?  ❺モヤモヤ・その5  情報誌『スーモ新築マンション関西版』には、「総合ランキング(新築分譲マンション人気ランキング)」が掲載されています。しかしながら、情報誌『スーモ新築マンション首都圏版』には、「人気ランキング」は掲載されていません。関西版と首都圏版に、なぜ「差をつける」のでしょうか?  ❻モヤモヤ・その6  そもそも情報誌『スーモ新築マンション首都圏版』は、「ランキング形式の記事」を嫌いなのでしょうか。答えは「ノー」です。その証拠を示しましょう。    2018年2月6日号・特集「お買い得な街ランキング」  2018年2月27日号・特集「TOKYO資産価値ランキング」  2018年5月15日号・特集「街の成長力ランキング」  2018年6月26日号・特集「街の成長力ランキング」  2018年8月29日号・特集「穴場な街ランキング」  2018年9月11日号・特集「東京23区住み心地ランキング」  2018年10月9日号・特集「通勤30分圏狙い目の街ランキング」  2018年10月23日号・特集「東京23区子育て力ランキング」  2018年を振り返っただけでも、「ランキング形式の特集」がずらっと並んでいます。つまり、同誌はランキングが大好きなのです。それなのに、なぜ?  ❼モヤモヤ・その7  情報誌『スーモ新築マンション首都圏版』の歴史を振り返ると、2017年に極めて不可解な出来事がありました。  同誌の「2017年10月17日号」に、ウェブサイト「スーモ」で得たデータを基にした、「2017年上半期ランキング──人気マンションTOP25」という特集が掲載されました。  しかしながら、意外にも、その翌号10月24日号から12月26日号までチェックしても、「2017年下半期ランキング──人気マンションTOP25」が掲載されていませんでした。  「2017年上半期ランキング」特集を掲載すれば、必ず「2017年下半期ランキング」特集も掲載するのが雑誌の世界での「お約束事」です。リクルートはなぜ、この「お約束事」に背いたのでしょうか。   ただし、「念には念を入れる」必要があります。そのため『スーモ新築マンション首都圏版』の翌2018年の全ての号、すなわち2018年1月9日号〜12月25日号までをチェックしてみました。それでも、やはり「2017年下半期ランキング──人気マンションTOP25」は掲載されていませんでした。  「スーモ」の「新築分譲マンション人気ランキング」に付きまとう「7つのモヤモヤ」をまとめると、「ワケがわからない」あるいは「不可解」という言葉にたどり着くことになります。  それゆえに、2018年時点では、「採点不可能」と判定した次第です。 【■■2019年時点の人気ランキング採点表】  続いて、2019年に行った採点結果を示しましょう。  ◆2019年時点の新築分譲マンション人気ランキング採点表】  「アットホーム」──2つ星半★★☆  「ライフルホームズ」──1つ星★  「メジャーセブン」──1つ星★  「ヤフー不動産」──1つ星★  「スーモ」──2つ星★★  このうち、「アットホーム」「ライフルホームズ」「メジャーセブン」の2019年版「新築分譲マンション人気ランキング」は、全体として2018年版と大きな違いはありません。よって、採点表も同じ結果になりました。  一方、「ヤフー不動産」の2019年版には、「新築分譲マンション人気ランキング」が掲載されていました。私はその内容をチェックして、「1つ星★」と判断しました。  また、「スーモ」の2019年版にも、「新築分譲マンション人気ランキング」が登場しました。私は、その情報量を「アットホーム」と同レベルと感じました。  ただし、厳密にいうと、名前は「A新築分譲マンション 人気ランキング」ではなく、「B新築分譲マンション アクセスランキング」になっています。  他の4つの不動産ポータルサイト、すなわち「アットホーム」「ライフルホームズ」「メジャーセブン」「ヤフー不動産」が人気ランキングと呼んでいるのに、なぜ「スーモ」だけがそれを避けるのでしょうか?????  このように何かモヤモヤして、「スッキリしないなぁ」と感じるため、「2つ星★★」と判断した次第です。 【■■就職情報サイト「リクナビ問題」と共通するもの】  Mercury社が運営する、クラウド型情報ポータルサービス「リアナビ」には、「斜め45度の視点」と名付けられたコラムが掲載されています。筆者は私(細野透)です。  そのコラム欄に、今年の9月から10月にかけて、次の3本の記事が掲載されました。   ①不動産ポータルサイトの「2018年版マンション人気ランキング」採点(上編)   ②スーモの「新築分譲マンション人気ランキング」を不可解と判断した理由(中編)   ③不動産ポータルサイトの「2019年版マンション人気ランキング」採点(下編)  ただし、「リアナビ」は会員制であるため、上記3本の記事は会員以外の方にはご覧いただくことができません。  しかし、私が3本の記事を執筆し、「リアナビ」に掲載しているのとほぼ同じ時期に、リクルートキャリア社による「リクナビ問題」が発覚しました。  これは、就職情報サイト「リクナビ」が、新卒採用に応募した学生1人ひとりの選考離脱率や内定辞退率の予測スコアなどを、契約企業へ提供していた問題です。  私は、就職情報サイト「リクナビ問題」と、不動産ポータルサイト「スーモ」のマンション人気ランキングに漂うモヤモヤ感には、何か共通したものがあると考えています。  それゆえに、「斜め45度の視点」に掲載した3本の記事をコンパクトにリライト。誰でも目を通すことが可能な、この「特別コラム欄」に転載した次第です。 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。