【特別コラム】新型コロナで一変した「分譲マンション市場」の景色|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2020年4月8日 07時30分
no image
 分譲マンションの市況を大きく把握したいとき、必ず参考にしなければならない専門メディアは、『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』および『日経産業新聞』であると思われます。  ◆『日経産業新聞』   このうち『日経産業新聞』は、日刊紙ならではのスピードを活かし、2020年2月21日の紙面で、「マンション価格は限界? 昨年3年連続上昇“ギリギリの均衡”」と題する記事を掲載しました。  ──右肩上がりが続いてきた新築マンションの価格に、頭打ちの気配が強まってきた。2019年の全国新築マンションの平均価格は、18年比で4787万円と3年連続で過去最高を更新したが、さらなる上昇余地は乏しいとの見方が広がっている──。 【■■『週刊ダイヤモンド』と『週刊東洋経済』のマンション特集】  ◆『週刊ダイヤモンド』   『日経産業新聞』の記事が掲載された翌日、『週刊ダイヤモンド・2020年2月22日号』が、「不動産・開発 危うい狂乱」と題する特集を掲載しました。「危うい狂乱」というのは、思わずギクリとしてしまう言葉です。   パート1「溢れるマネー」   パート2「開発の新主役」   パート3「大阪・名古屋・福岡の異変」   パート4「実需のアラート」   パート5「狂乱の果て」  このうちパート4では、「中古タワマンに起きた残酷な現実」として、「40階の住戸」と「格下の20階の住戸」が平方メートル単価で同価格だった例を紹介。「全体として価格が高いから売れない」と分析しています。  ◆『週刊東洋経済』   それから3週間後に、『週刊東洋経済・2020年3月14日号』が、「デベロッパーの売り方、全部バラす! マンションの罠」と題する特集を組みました。「マンションの罠」というのもまた、思わずギクリとしてしまう言葉です。   その冒頭は、次のような文章で始まります。  ──価格高騰でも品質は劣化。そんな新築マンションが増加している。中古でも管理不全の物件が散見される。思わぬ「罠」にはまらないために、消費者は情報武装が不可欠だ──。  パート1「7つの購入チェックポイント」  ①広さ:部屋はどこまで狭くなる? 変わる「自宅」の役割  ②広告:間取り図でここまでわかる 部屋が抱える「不都合な真実」   ③設備:高級?コストカット? 設備・仕様チェックポイント   ④モデルルーム:「マンションの達人」が伝授 見るべきポイントはここ!  ⑤価格:市況高騰でも諦めない 価格の「歪み」はこう探す  ⑥立地:郊外マンションの現実 商業施設に近いかが肝心  ⑦管理:進む管理状況の「点数化」 管理を買う時代が来る  パート2「セールストークの本音」  ①急増するコンパクト住戸、その価値は本物か  ②パワービルダー系が挑む、経済性重視のマンション  ③大手との「価格差」が最大の武器  ④豪雨への対応急務だが追加コストの負担見えず  ⑤不正利用問題の発覚で住宅ローンを借りづらくなるケースも  ⑥住宅ローンの繰り上げ返済は損?  ⑦マンション値上がり値下がりランキング 【■■新型コロナで景色が一変、国交省から相次ぐ通知】  以上のように『日経産業新聞』、『週刊ダイヤモンド』、『週刊東洋経済』の3メディアは揃って、「分譲マンション市場は変わり目にある」と指摘していました。  そういう時に、突然、「新型コロナウィルス」が猛威をふるいはじめました。そうなると見える「景色」は一変してしまいます。  そして国土交通省から「各種の通知」が発行されました。  ◆「施工中の工事における新型コロナウイルス感染症の罹患に伴う対応について」(2月25日付)   ──これは工事関係者が感染した場合、「適切な処置を講じる」ように求めたものです。  ◆「当面のイベント等の開催について」(2月26日付)   ──これは人が集まると感染者が増える危険性があるため、「イベントを中止する」か「適切な措置を講じる」ように求めたものです。  マンション販売センターの場合には、「顧客および販売担当者の双方が感染しないための措置」を講じることが第一です。しかし、各自治体が人出を減らすことを目的にしている場合には、「販売センターを休みにする必要」が生じるのです。  ◆「建築設備の部品供給の停止等への対応について」(2月27日付)    ──これは海外で生産される「トイレ、システムキッチン、ユニットバス、ドア」などの供給が滞っているため、「建築工事の工期が延びることがある」と注意を促したものです。  【■■「マンションビジネス総合展2020」は開催されるのか?】  こういった中で危惧されているのが「マンションビジネス総合展2020」の行方です。  これは「株式会社イノベント」が、2020年5月14日〜15日に、東京ビッグサイト青海展示棟で開催する予定になっている、「マンション業界の関係者が一堂に会する、日本初のイベント」です。  しかも、住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの協力が決定しています。この7社は別名「メジャーセブン」。マンション業界で最も影響力を持つ会社です。  そして出展社は、マンション設計・施工・販売・管理に関わる製品・サービスを提供する企業です。  具体的には「建築設備、大規模修繕、販促・営業支援、防災設備、震災対策、設計関連ソフトウェア、建材、家具・インテリア・照明、AI・IoT関連、ZEH関連、i-Construction関連、仮設機材・資材、省エネ設備・機器、販促・営業支援、マンション管理サポート、管理代行」等の各社になります。  注目したいのは「特別講演」のメニューが充実していることです。  ◆分譲マンション市場の最新動向とこれから   「分譲マンション業界の今後の方向性」    (不動産経済研究所・代表取締役社長・高橋幸男氏)         「分譲マンション市場の現状と今後の見通し」    (長谷工総合研究所・取締役市場調査室長・酒造豊氏)                                ◆これからのマンション管理のあり方とは   「マンション管理組合運営の好事例を紹介」    (つなぐネットコミュニケーションズマンション事業部・伊藤鳴氏)   「今、管理会社に求められているもの」    (マンションコミュニティ研究会・代表・廣田信子氏)   ここには4つの講演だけをピックアップしましたが、全体では28の講演が行われます。それに加えて、52の専門セミナーも行われます。私は分譲マンションをテーマにして、これほど充実した講演やセミナーが開催されるイベントは見たことがありません。  しかし新型コロナウイルス感染症の勢いがストップしない場合には、「マンションビジネス総合展2020」が中止されるかもしれません。  主催者のイノベント社は、会期1カ月前の4月14日(火)を目途に、開催の可否を判断することにしています。 「マンションビジネス総合展2020」の公式ウェブサイトのURL <www.housing-biz.jp> 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。