【特別コラム】新型コロナに対する不動産を中心とする各社の闘い|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2020年4月15日 07時30分
no image
 新型コロナウイルス問題に直面した後、不動産を中心とする各社はどのような対策を講じてきたのでしょう。「プレスリリース」「ニュースリリース」の配信サービスを手掛ける「PR TIMES」を利用して、その動向を調べてみることにしました。  今回は日本国内の感染者が256人だった3月1日から、首都閉鎖という話が真剣に検討されるようになった3月31日(感染者2000人超)までの、1ヵ月間に発信されたリリースを収集。その中から不動産に関わる7本のリリースの内容を要約したいと思います。 【❶自宅やどんな場所からでもバーチャルでお部屋が内見できる「イツデモ内見」前倒し】  不動産会社クラスコ(金沢市)は、現地まで行かずに賃貸物件の各部屋を内見できる物件検索ウェブサイト「イツデモ内見」を、新型コロナウイルスの発生を受けて、1ヵ月前倒してスタートさせました。   画像は「高画質360度パノラマ画像」なので、各部屋の様子が良く分かります。また、カーテンや冷蔵庫置場などの寸法、おすすめポイントの説明動画なども含まれています。   ユーザーと販売スタッフは、パノラマ画像を自動で同期し、通話しながら内見することが可能です。そのため、現地に行かなくても、おおよその見当を付けることができます。  クラスコは金沢市とその近郊で、300を超える部屋を順次アップしている段階です。同社はまた、全国の不動産会社にパノラマ撮影の技術と手段を提供して、各社の物件情報をウェブサイト「イツデモ内見」に掲載していく予定にしています。  なおクラスコは、東京都中央区銀座5丁目に、銀座オフィスを構えています。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000505.000006823.html> 【❷安藤忠雄氏設計・賃貸マンション「LEGALAND下北沢」の内覧会中止】  リーガル不動産(大阪市北区)は、新型コロナ感染症の影響を考慮。3月24日・25日に開催を予定していた、安藤忠雄建築研究所設計の賃貸マンション、「LEGALAND下北沢(東京都世田谷区代田)」内覧会の中止を決定。それを3月9日にリリースしました。  この賃貸マンションは、いかにも安藤忠雄氏らしい「作品」ですが、総戸数28戸と小規模です。それゆえに私は、「内覧会を中止するのなら、関係者に電話かメールで連絡すれば済むのではないか?」と感じました。  しかし調べてみると、「PR TIMES」を利用して、2月25日に「竣工に伴い報道関係者に向け3月24日・25日に内覧会を行います」というプレスリリースを発信していたことが分かりました。  それゆえに、3月9日に、「連絡漏れがないように、念のためにリリースした」と思われます。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000054323.html> 【❸新型コロナウイルスなど感染症の除菌・洗浄サービスの提供を開始(児童・高齢者・医療関連施設は無償提供します)】    特殊清掃専門会社のブルークリーン(東京都大田区)は、新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策として、EPA(米国環境保護庁)のガイドラインに基づく薬品を用いた「除菌・洗浄業務」を、3月12日から一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)で開始しました。  料金は飲食店(15平方メートル以上)で5万9000円から。また大型施設は1平方メートル当たり1500円。いずれも24時間対応可能なそうです。  このリリースが目に留まったのは、「児童・高齢者・医療関連施設は無償提供します」と注記されていたためです。その詳しい内容も説明しましょう。  ──大田区内の保育園や小中学校、高齢者施設・医療関連施設の消毒作業を無償で提供させていただきます。当社は地域密着企業として日頃から大変多くの個人・法人様に支えられて事業を行っており、地域に対して何か出来ることはないかと社内で検討したところ施設限定ではございますが、消毒作業の無償提供という考えに至りました。弊社で抱えている薬品の在庫には限りがございますので、作業をご希望の施設はお早めにお問い合わせください──。  大田区には羽田空港があるので、海外あるいは国内各地から、感染者が集まってきます。それゆえに、すでに作業の希望者が殺到しているかもしれません。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000042172.html> 【❹「新型コロナウイルス関連倒産」は13件 ―(3月24日10時現在)】  帝国データバンクは3月24日、「新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(法的整理または事業停止)は、全国に13件(法的整理8件、事業停止5件)あることが判明した」と発表しました。  業種別では、旅館(2件)、国内旅行業、クルーズ船、レンタカー(各1件)などの観光関連事業が5件、コロッケ製造、鮨割烹店、食堂運営などの飲食関連事業者が3件を占めています。  エリア別に見ると「近畿」が4件で最多。「北海道」が3件、「東北」「関東」「北陸」「中部」「中国」「九州」がそれぞれ1件となっています。  負債額のワーストスリーは以下の3社です。  1位──68億6100万円、エターナルアミューズメント(娯楽施設、東京都千代田区)  2位──50億円、シティーヒル(衣料品、大阪市中央区)  3位──12億4300万円、ルミナスクルーズ(クルーズ船、神戸市中央区)  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000043465.html> 【❺14日間拘束に悲鳴を上げる帰国者に滞在先を提供】  リゾート地の別荘分譲事業を展開するフィールジャパン(FEEL JAPAN)は、新型コロナウィルスの感染拡大防止の為、「突然の政府の強制措置を強いられる海外からの帰国者」に対して、14日間隔離可能な滞在先の提供を開始しました。  同社は、東京都新宿区アイランドタワーに本社を置く不動産会社で、「東京、沖縄、札幌」などで不動産の開発、分譲、販売、管理を手がけてきました。そして、第二のコア事業として、「海外投資家向け首都圏の不動産取引事業」を開始しました。  今回は、空港にほど近い別荘の持ち主や賃貸物件を保有している「不動産会社、メガ大家」に対して、格安で空き部屋の提供を呼びかける計画していました。しかし国土交通省からは「民泊新法に抵触するので、手順を踏んで民泊登録後でないと認められない」と門前払いされたそうです。  そのため、空港近辺のホテル・旅館業者各社に対して、格安で提供出来る14日間宿泊プランの提供を提唱することに切り替え。中にはすでに宿泊プランを提供している企業がいるそうです。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000052271.html> 【❻白川郷の民宿で働き方改革実施へ】  白川郷の地域商社「合掌ホールディングス」は、台湾のOwlting社と提携。同社が開発した「宿泊予約システムOwlnest」を、合掌造民宿5軒に導入しました。  まず、その背景を説明します。  岐阜県大野郡白川村がまとめた2019年の観光入り込み客数(速報値)は、215万人(うち98万人が外国人)と過去最高を記録しました。  しかし人口1600人ほどの地域に、200万人を超える観光客数は受け容れ能力をはるかに超え、「オーバーツーリズム問題」を引き起こしていました。  その原因は、合掌造りの民宿(全19棟)では、予約の受付は電話もしくはFAXのみで、かつ中間業者や旅行代理店が間に入っていたためです。すなわち、「交通整理をする人が誰もいなかったため」、大混雑してしまっていたのです。  そのため1人の女将さんが中心になって、民宿5軒をまとめて地域商社「合掌ホールディングス」をつくり、「宿泊予約システムOwlnest」を導入しました。  これにより、従来は予約管理業務に大半の時間を掛けていた女将さんが、システムを利用することで、「お客様と対面する時間を大切にする」という本質的な部分に、より時間を費やすことができるようになったのです。  この件に関するニュースリリースのタイトルは、「オーバーツーリズムからローカルファーストへ。コロナウィルスを機会と捉え、白川郷の民宿で働き方改革実施へ」となっています。  全体像を理解しやすくするために、箇条書きにまとめておきましょう。  ①新型コロナ問題で白川郷を訪れる観光客が減った。  ②民宿の女将さん達に考える時間ができた。  ③「この機会にオーバーツーリズム解消を目指すべき」と反省した。  ④そのための手段として「宿泊予約システム」を合掌造民宿5軒に導入した。  ⑤その結果、お客様と対面する時間を、増やすことが可能になった。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000047734.html> 【❼4月1日(エイプリールフール)にコロナウイルス関連のデマ情報を監視】  AI等の最先端技術を活用した災害・危機管理情報サービスを提供するSpectee(スペクティ)社は、4月1日のエイプリールフールに「新型コロナウイルス関連のデマ情報」が増加するのを防ぐため、監視を強化することになりました。  そして、リスクの高いデマ情報に関しては、リアルタイム危機管理情報サービス「Spectee(スペクティ)」を通じて、報道機関や官公庁や自治体などに即座に伝達する予定です。  リリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000016808.html> 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。