【特別コラム】新型コロナに「信念を持って向き合うライフル社」に“共感の拍手” |細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2020年5月13日 07時30分
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 4種類の不動産ポータルサイト、すなわち「at home」「LIFULL HOME'S」「SUUMO」「Yahoo!不動産」は、「新型コロナウイルス感染症」に、どのように対応しているのでしょうか。  ゴールデンウィークが過ぎた5月11日、各ポータルサイトを訪れて、「新型コロナウイルス対策」の出来栄えを比較してみました。  ◆出来栄え─1位「LIFULL HOME'S」    ウェブサイトの冒頭には、「新型コロナウイルスの罹患者および生活に影響を受けている人々へのお見舞いの言葉」が掲載されています。  ──このたびの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された皆さまと、生活に影響を受けられている皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます──。  その上で、「掲載情報の更新遅延」と「不動産各社からの連絡の遅れ」があることを説明しています。  ──感染拡大の影響により、掲載情報の更新遅延、不動産会社様からの連絡や資料の発送等が遅延する場合がございます。 何卒ご斟酌くださいますようお願いいたします──。  不動産ポータルサイトとして、「丁寧に対応しているなぁ」と感じました。  URL<https://www.homes.co.jp>    ◆出来栄え─2位「at home」    ウェブサイトの冒頭で、「掲載情報の更新遅延」と「不動産各社からの連絡の遅れがあること」を説明しています。これは「標準的」です。  URL<https://www.athome.co.jp>    ◆出来栄え─同点2位「Yahoo!不動産」    こちらもウェブサイトの冒頭で、「掲載情報の更新遅延」と「不動産各社からの連絡の遅れがあること」を説明しています。これも「標準的」です。  URL<https://realestate.yahoo.co.jp>  ◆出来栄え─4位「SUUMO」  こちらはウェブサイトの冒頭に、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響について」とだけ、書かれています。そして「影響について」をクリックすると、「掲載情報の更新遅延」と「不動産各社からの連絡の遅れがある」ことを述べています。  すなわち、ユーザーに「余計な手間」を強いる分だけ、順位が下がって4位になりました。  ただし、トップページを隅々まで眺めると、真ん中を過ぎた辺りに「SUUMOジャーナルの新着記事」というコーナーがあり、新型コロナ関連のニュースも掲載されていました。 URL<https://suumo.jp> 【■■新型コロナ問題に対して熱心にプレスリリースを発表するライフル社】   出来栄え1位の「LIFULL HOME'S」を運営するライフル社は、新型コロナウイルス問題を受けて、熱心にプレスリリース(ニュースリリース)を発表し続けています。  ❶2020年3月2日   新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応について。   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000033058.html>  ❷3月5日   新型コロナウイルス感染拡大を受け、LIFULL HOME'S加盟店向けに、「オンライン相談/オンライン物件見学/IT重説」サービスを無償提供開始。   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000033058.html>  ❸3月19日   緊急実施「第1回 新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」。   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000033058.html>  ❹4月1日   2020年度オンライン入社式社長訓示の要旨。   URL<https://lifull.com/news/17154>   (注)これはプレスリリースではなく、ライフル社のウェブサイトに「ニュース」として掲載。     ❺4月14日  ありのまま住まい相談「LIFULL HOME'S FRIENDLY DOOR」に、新たに「シングルマザー・ファザー」「被災者」の検索カテゴリーを追加。  URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000033058.html>  ❻4月20日   通期業績予想の修正に関するお知らせ  (注)これは、2019年11月23日に公表した、「2020年9月期通期(2019年10月1日〜2020年9月30日)の業績予想」を、大幅に下方修正(マイナス31.9%)したという内容。   URL<https://lifull.com/wp-content/uploads/2020/04/release_20200420_yosou.pdf>  ❼4月21日  「第2回 新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」。 “企業活動に影響が出ている”“今後の影響を心配している”不動産事業者が、1か月前と比べて増加。   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000033058.html>  ❽5月1日  「あらゆるLIFEを、FULLに」するため、ともに歩んでくださる皆さまへ。  (注)これは、主に「ユーザーおよびクライアント」「不動産業界」「従業員」に向けた、真心を込めた「メッセージ」です。   URL<https://lifull.com/news/17354>  ❾5月7日  新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応について。  (注)これは、5月4日に発表された、「緊急事態宣言の5月31日までの延長」に伴う、対応を説明しています。 URL<https://lifull.com/news/17089> 【■■「2020年度入社式・井上高志社長「訓示」の要旨】   私は一連のプレスリリースやニュースのうち、❹4月1日の「オンライン入社式」で行われた井上社長の訓示は、「ぜひ詳しく紹介させてもらわなければならない」と思いました。以下に、その要旨をピックアップします。  ◆1「逆境に打ち勝つ」  みなさんにとって今日は、学生から社会人になる節目の日ですが、世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで大きな混乱に直面しています。  しかし、振り返ってみると過去にも、日本や世界で様々な逆境がありました。私自身1991年に社会人になりたての頃にバブル崩壊に直面し、たった3か月で入社した会社から転籍になりました。自分が望んだ道ではなく、スタートから違う方向へ進むことになったわけです。  その中で培われた教訓──。  ◇社会に出ればいつどんなことが起こっても不思議ではない。  ◇どんな状況でも前を向いて自ら道を切り開くしかない。  ◇世の中や会社のせいにしたところで何も変わらない。   他律ではなく、自律で切り開く能力を身に付ける「修行の場」として前向きにとらえる。  ◇会社の中ですら自ら変革を起こし成果を出せない者が、社会変革など起こせるはずがない。  そうして自らの信念(不動産業界を変革する)に従い、1995年にたった一人で会社を創業しました。しかし、1997年には未曽有の金融危機で、潰れることがないと思われていた大企業が次々に倒産しました。  2000年代初頭にはネットバブル崩壊が起こり、株価が100分の1になる企業もありました。このように、およそ10年に一度は、社会に大変革を起こすような逆境が生まれてきました。  1990年 バブル崩壊  2000年 ネットバブル崩壊  2008年 リーマンショック  2020年 新型コロナウイルス  しかしそれは機能不全に陥っている部分を、明らかにしてくれる兆候でもあります。それら課題点を克服してより良い未来を、人類はつくってきました。   みなさんも社是「利他主義」という信念に従って、この逆境に打ち勝ってほしいと思います。  ◆2「ピンチをチャンスに」   みなさんは、このピンチをチャンスに変える挑戦のプロセスで、自らの能力を磨き上げていってください。 今回の新型コロナウイルス感染症は、世界が自律分散型の社会へ進化するための大きなきっかけになると思っています。   これまでの20世紀までに形成された社会は、効率と利益を追及した結果として中央集権的な社会システムを作り上げてきたと考えています。それまでの技術レベルで全体最適をはかるためには、中央集権的なシステムがうまく機能してきました。  そこには当然メリットとデメリットが存在します。それでも中央集権的な方の具合が良かったのです。  しかし、21世紀を迎えてインターネットで多様性のある社会へと進化し、シェアリングエコノミー、ブロックチェーン、AI、SNS、コミュニティの多様化などが台頭してくる時代になり、それまでの中央集権的な社会システムの課題が見えてきました。  そして今回のことで、サプライチェーンの機能不全や、医療現場の崩壊、世界が連動した金融システムの同時多発的な市場の混乱などが課題として見えてきました。  21世紀は過度な効率性の追求や利益の追求を目的とするのではなく、「永続的な幸せ(Well-being)を享受できる社会づくり」を目的として、自律分散型の社会システムをテクノロジーで実現する好機になると思っています。  水、食料、住まい、教育、医療、働き方、エネルギー、通信など、人々の生活の基礎となる領域でオフグリッドや循環型をベースとしたテクノロジーの進化によって、自律分散型社会が形成され、限界費用ゼロ社会の到来を迎えることを私たちは目指しています。  その結果、人々は豊かに人生を送ることと経済的にも不安のない状態を両立でき、多様なコミュニティでWell-beingを高めていくものと思っています。  そして、今回の新型コロナウイルス感染症による影響は、人々の価値観や思考を進化させ、社会の大変革期の始まりになるはずです。   皆さんは新社会人として大変な逆境の時代に船出をすることになりますが、「逆境に打ち勝つ」という信念を持ち、「ピンチをチャンスに」するための能力を磨き上げていって下さい。  20世紀に生まれ、21世紀に社会人になる皆さんの世代には、ぜひ世紀をまたぐ架け橋となるような革新的な挑戦をしてほしいと願っています。   URL<https://lifull.com/news/17154> 【■■筆者(細野透)から共感の拍手】    私はこの社長訓示を読み進めているうちに、心の中で思わず拍手をしていました。それには2つの理由があります。  第1の理由──新型コロナ問題が発生して以降、最前線で取り組む医療従事者などに対して、周囲の人がお礼のために一斉に拍手をする「風習」が広まっています。  そして拍手をした人もまた、拍手の快い響きを聞いて、「自分は孤立しているのではなく、同じ思いを抱いている人が大勢いる」と気づいて、勇気をもらうことになるのです。  第2の理由──「井上高志社長の信念」と「語られた世界観の内容」に、ぜひ敬意を表さなければならないと感じたからです。  それゆえに、私も心の中で「パチパチパチ、パチパチパチ」と・・・。 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。