【特別コラム】新型コロナが「新築マンションや中古マンションの価格」に及ぼす影響 |細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2020年5月20日 07時30分
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 『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』などの経済専門誌は現在、新型コロナウイルス問題の発生によって、「新築分譲マンションや中古マンションの価格が、どのような影響を受けることになるか」というテーマを巡って、熱心に取材を続けています。  今回はまず、新型コロナが「分譲マンションや中古マンションの価格」に及ぼす影響を把握するための、「基本的なデータ」を収集。その後に、「各種データを読み解くための総合的な方法」を紹介したいと思います。 【■■「マーキュリー」の「月例新築マンション動向・3月実績」】   株式会社「マーキュリー」は4月16日、「速報・月例新築マンション動向3月実績発表──新型コロナの影響か? 16の区で平均価格変動率が前年同月比でマイナスに!」と題する、かなり長いタイトルのプレスリリースを発表。次のように説明しました。  ①3月の平均価格変動率(前年同月比)は、東京23区中、16区で前年同月比でマイナスとなった。  ②その一方、練馬区・中野区・杉並区・港区の4区では、プラスになった。  ③また、足立区・豊島区・品川区は、該当なし(販売実績なし)という結果になった。  その上で、「16の区で平均価格変動率がマイナスになったのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響とも考えられる」、とコメントしています。  プレスリリースのURL   <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000112.000018769.html> 【■■「不動産経済研究所」の「首都圏マンション市場動向、2020年3月度」】  株式会社「不動産経済研究所」は同じ4月16日に、プレスリリース「首都圏のマンション市場動向、2020年3月度」を発表。次のように説明しました。  ①「3月の新規発売戸数は、対前年同月(3337戸)比で35.8%減の2142戸と、新型コロナウイルスの影響が出始めて大幅に減少した」。 ②「また1戸当り価格は6156万円、1平方メートル当たり単価は97万3000円だった。これは前年同月比で1戸当り396万円(6.0%)ダウンする一方、平米単価は2万6000円(2.7%)アップしている」。   すなわち、不動産経済研究所は、「新型コロナウイルスの影響は、主として販売戸数減に現れている」と解釈。その一方で、「1戸当たり価格はダウンしているが、平米単価はアップしている」として、新型コロナウイルスが価格に影響しているとは見ていません。  データのURL   <https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/422/dGVy4NmK.pdf> 【■■「東日本不動産流通機構」の「首都圏不動産流通市場動向」】   続いて公益財団法人「東日本不動産流通機構」が4月17日、2020年1月〜3月の「首都圏不動産流通市場動向」を発表。次のように説明しました。    ①「首都圏における中古マンションの成約件数は、1万0071件だった。これは前年比で1.9%減になる」。  ②「その一方、1平方メートル当たりの成約単価は54万9100円と、前年比で3.5%上昇した」。  すなわち、東日本不動産流通機構は、「中古マンション市場においては、新型コロナウイルスの影響で、成約件数が少しだけダウンしている」と解釈。  その一方では、「1平方メートル当たりの成約単価がアップしている」として、新型コロナウイルスの影響を認めていません。  データのURL   <http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_202001-03.pdf> 【■■「グローバル都市不動産研究所」の「コロナショックが東京の不動産に与える影響」】  以上のように、「マーキュリー社」「不動産経済研究所」「東日本不動産流通機構」の3者では、新型コロナが及ぼす影響に対する見解が微妙に異なっています。  それに対して、投資用不動産を扱う株式会社「グローバル・リンク・マネジメント」の「グローバル都市不動産研究所(所長=明治大学名誉教授・市川宏雄氏)」は、3者の見解が発表される少し前の4月14日に、「あたかも3者の見解を統合する」かのようなプレスリリースを発表していました。  これは先の3者とは違って、「新型コロナ問題の影響を主軸に据えた報告書」です。その内容を要約しましょう。  ❶「リーマンショック時の不動産の動向」  リーマンショック時の公示地価の動向をみると、主に商業地価格に対する影響が出た。一方、住宅地価格は商業地と比べて大きく下がらなかった。その結果、東京都内のマンション価格は、新築・中古とも6%程度の下落にとどまり、1年程度で回復した。  ❷「コロナショックが不動産に与える影響」  金融危機だったリーマンショックと異なり、コロナショックはヒト、モノの移動を大幅に抑え込む実体経済の危機である。したがって観光業、飲食業、小売業などのサービス業に対する影響が大きく、これらが立地する商業地の不動産価格は下落する可能性がある。一方、住宅地の不動産価格は、商業地よりも影響は少ないと予想される。  ただし、世界および日本の新型コロナウイルスの感染状況は刻々と変化しており、多くを見通せない状況にある。そして、深刻な不況に陥れば、家計所得の大幅な低下にもつながるので、住宅地であっても不動産価格の低迷が続くおそれもある。  ❸「東京五輪効果と経済対策がポイント」  東京五輪の延期について、エコノミスト達は、「中止でなく延期であれば、五輪開催年の経済効果は先送りされ、失われることはない」と見ている。  それに加えて、「先送りをしても期待通りの効果が出現するには、それまで国内観光業界が持ちこたえ、企業倒産が食い止められるよう、政府が適切な経済対策を行うことが、重要なカギを握る」と警鐘を鳴らしている。  日本経済の腰折れを防ぐため、今年1年、政府の経済対策がどれだけ大胆かつ的確に行われるかが注目される。  ❹考えられる “2つのシナリオ”   その後に、市川宏雄所長による、“2つのシナリオ”が続きます。  「政府から緊急事態宣言が出されましたが、本ニュースレターの発表時点(2020年4月14日)では、あいにく感染者増が止まらない状況です。ここでは2つのシナリオが考えられます。」  「1つは緊急事態宣言の終わる5月の連休明けには事態の収拾がおおむね図られ、夏には経済回復の兆しが見え、秋には正常に戻ってくるというものです。」  「もう1つは、コロナ騒ぎが夏を超してしまい、どうやら経済の回復は早くて年末、遅ければ来年までかかってしまうというものです。」   「すなわち、これから経済の低迷がどこまで続くのかによって、展開が違ってきます・・・。」   なお市川宏雄所長は現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事などの要職を兼任しています。   プレスリリースのURL <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000020953.html> 【■■「グローバル都市不動産研究所」によるプレスリリース一覧】  ここで紹介した「グローバル都市不動産研究所」は、これまで3本のプレスリリース(ニュースレター)を発表しています。念のために、紹介しておきましょう。  ◇1本目──2019年4月25日付け  「昭和」「平成」元号別住宅地地価の変遷を分析   「令和」に向けて地価上昇が期待される注目エリアを発表!   URL<https://www.global-link-m.com/ver2017/wp-content/uploads/2019/04/0425【NEWSLETTER】元号別住宅地地価の変遷_最終稿HP.pdf>  ◇2本目──2019年9月26日付け  「東京都の転入超過が8万人超、女性が男性を上回る──   20~24歳女性が上京する理由とは?東京一極加速化を分析」   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000020953.html>  ◇3本目──2019年12月13日付け  「2020年東京オリンピック後に東京都の不動産価格はどうなるのか?」   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000020953.html>  この中では、2本目の「20~24歳女性が上京する理由とは?」というタイトルが魅力的です。そして実際に読んでみると、「ウーン」と考え込んでしまいます。 【■■追記】  株式会社「マーキュリー」は4月28日、「新型コロナ影響、首都圏供給戸数9割減。販売自粛受け減少加速」と題するプレスリリースを発表しました。  これは、4月7日に「東京・大阪など7都府県」、4月16日に「全国47都道府県」に緊急事態宣言が発令された結果、マンションデベロッパー各社の販売自粛が進んだことを重視。その影響を調査したものです。  その要点を以下にまとめました。  ①2019年3月に4990戸だった供給戸数は、1年後の2020年3月には、46.4%減の2675戸になった。  ②2019年4月に905戸だった供給戸数は、1年後の2020年4月1日〜4月20日の期間には、実に87.5%減の209戸にまで落ち込んだ。   URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000114.000018769.html> 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。  建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。