【特別コラム】「東京競売ウォッチ」明渡の強制執行について|山田純男(ワイズ不動産投資顧問 代表取締役)
2020年6月25日 07時30分
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~毎週木曜日の連載で開始した株式会社ワイズ不動産投資顧問 代表取締役の山田純男さんによる東京地裁の競売物件開札トピックスを綴るコラム「東京競売ウォッチ」です~  前回2004年施行の民事執行法による事前内覧制度が、実際は有名無実の制度化してしまったことを紹介した。今回は明渡しの強制執行に関することを取り上げたい。まず明渡しに関し一番苦慮するのが占有している相手側が不明である場合である。  引渡命令を申立てようにも相手が不明なので不可能である。そこで、旧民事執行法下では保全処分を不動産所有者宛に行い、内部に立ち入り、その際占有者を確認し、その上でその相手に対し再度占有移転禁止等の保全処分をなし、そこでようやく引渡命令申立てといった具合で非常に回りくどかった。何よりそうこうしている間に占有者が替わってしまえば、また振り出しに戻る。実務的にはとても順を追ってできる余裕は無い。  この問題について2004年施行の新法では相手が知れない場合であっても占有移転禁止等の保全処分が申立てられ、その際、認定された占有者のみならず、その後変更された占有者に対しても引渡命令が申立てられることとなった。もちろん明渡しの強制執行についても相手の占有者交代作戦にも対抗可能となり、円滑な断行(実際に家財などを運び出すこと)の途が拓かれた。この点は買受人にとって良かったのであるが、融通がきかなくなったのが明渡しの催告制度である。  旧法下でもいきなり断行するのではなく事前に占有者に対し執行官は「催告」を行ってきたが、これは運用として行っていたに過ぎなかった。現行法ではこれを明確に法律で定めてある。そして催告を執行官が行った場合は断行予定日が記載された「公示書」を貼ることが義務付けられていて、もし断行予定日を延期するなら再度執行官による催告手続きを行った上公示書を貼りなおすことが求められる。旧法下では占有者との交渉で断行予定日を延期する場合は運用として執行官への簡便な延期申請で済ませていたのが実態であった。それに比べると現行法は断行の延期に関しては融通がきかないとも言える。 山田純男(やまだ・すみお) 株式会社ワイズ不動産投資顧問 代表取締役 1957年生まれ。 1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。