【特別コラム】「不動産のおとり広告」は永遠に不滅?|細野透(建築&住宅ジャーナリスト)
2019年1月9日 08時00分
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 「国土交通省・土地建設産業局」の不動産業課長は、2018年11月6日、不動産に関係する主な団体の長に対して、「おとり広告の禁止に関する注意喚起等について」と題する公文書を発行しました。 http://www.mlit.go.jp/common/001260360.pdf  「広告の適正化等については、従前より貴団体を通じて注意喚起等をお願いしているところですが、年度末にかけて宅地建物取引が増加する時期を迎えることから、業務の適正な運営と宅地建物の公正な取引の確保を図るため、改めて通知します」  この内容を分かりやすくいうと、「おとり広告がなくなるように努力して下さい」ということです。冒頭に掲載した画像は、そのタイトル部分だけをピックアップしたものですが、文字が小さいため見にくいかもしれません。  実は、「おとり広告の禁止に関する注意喚起」は、2016年11月29日、2017年11月30日に続いて今年で3年連続です。不動産業課長も深刻に受け止めていると思われます。 【■■おとり広告に「2つのタイプ」】  「おとり広告」とは、客寄せのための悪質な「架空の広告」を意味。大きく「第1のタイプ」と「第2のタイプ」に分かれています。  このうち「第1のタイプ」は、「不動産の表示に関する公正競争規約第21条(おとり広告)」などに明示されたもので、次の3種類に細分されます。  (1)「物件が存在しないため、実際には取引することができない物件」に関する広告。  (2)「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件」に関する広告。  (3)「物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件」に関する広告。  この3つは、主に広告を出す不動産会社の責任になります。  続いて「第2のタイプ」です。  (4)「すでに取引が終了したにもかかわらず、物件の広告がウェブサイト等にそのまま掲載され続けている」ケース。  このケースもまた、おとり広告と判断されます。そして、広告を出した不動産会社の責任だけではなく、それを掲載し続けていた不動産ポータルサイトの管理方法も問われることになります。 【■■「おとり広告」に関係する主な組織】  話が前後しますが、「おとり広告」に関係する主な組織をまとめておきましょう。これがなかなか複雑です。 ◇国土交通省──「宅地建物取引業法」を管轄 ◇公正取引委員会──「不当景品類及び不当表示防止法」を管轄 ◇不動産公正取引協議会──「不動産広告の適正化」を目的として、全国9ブロックに設立されている団体  北海道不動産公正取引協議会  東北地区不動産公正取引協議会  首都圏不動産公正取引協議会  東海不動産公正取引協議会  北陸不動産公正取引協議会  近畿地区不動産公正取引協議会  中国地区不動産公正取引協議会  四国地区不動産公正取引協議会  九州不動産公正取引協議会  このうち、首都圏および近畿地区の協議会だけが、公益社団法人(行政庁から公益性を認定された社団法人)で、強い影響力を持っています。  日本にある、ほとんどすべての不動産会社は、いずれかの不動産公正取引協議会に加盟しています。  そして協議会は、加盟各社が「おとり広告」などを行った場合、警告を行ったり、500万円以下の違約金を徴収することができるとされています。 ◇ポータルサイト広告適正化部会──インターネット広告の適正化を推進するため、首都圏不動産公正取引協議会の賛助会員のうち、不動産ポータルサイトを運営する5社の広告審査責任者などをメンバーとして2012年に発足。  現在はアットホーム、CHINTAI、マイナビ、LIFULL、リクルート住まいカンパニーの5社が参加しています。 【■■「おとり広告」の割合】  首都圏不動産公取協ウェブサイトの「相談&違反事例」コーナーなどを参考にすると、おとり広告には次のような傾向があるようです。 https://www.sfkoutori.or.jp/sodan-ihanjirei  A 違反広告のうち、上記の「第1のタイプ」に相当するケースは、全体の60%程度。そのうち1〜2%が特に悪質──。  B 違反広告のうち、上記の「第2のタイプ」に相当するケースは40%程度。その主な原因は、物件数と成約速度に、不動産業者およびインターネット広告会社のメンテナンス作業が追いつかないため──。 【■■2018年の「おとり広告」は前年比約25%のアップ】  「ポータルサイト広告適正化部会」の情報を参考にすると、おとり広告には次のような傾向があるようです。  C 「2016年11月〜2017年10月」の1年間に、適正化部会が把握した違反物件は2512件。  D 「2017年11月〜2018年10月」の1年間に、適正化部会が把握した違反物件は3128件。  注目したいのは、2016年11月〜2017年10月の違反件数に比べて、2017年11月〜2018年10月の違反件数が616件(約25%)も上回っている事実です。  国交省の不動産業課長はこの種の情報を参考にして、2018年11月6日に、「おとり広告の禁止に関する注意喚起等について」と題する公文書を発行したと思われます。  しかしながら、これまでの経緯を見ていると、「おとり広告」は何となく「永遠に不滅」のような・・・。 【関連記事】 【国土交通省】おとり広告の禁止に関する注意喚起等について|全国宅地建物取引業協会連合会 https://news.real-net.jp/pickup/90395   ------------------------------------------------------------------------------------------------ 細野 透(ほその・とおる) 建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。 東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。