深刻化する建設業の人手不足と外国人労働者への期待|ニッセイ基礎研究所
2019年1月18日 16時32分
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国土交通省「建設労働需給調査」によれば、建設業の労働需給を示す「建設技能労働者過不足率」は、震災復旧・復興事業や、景気回復に伴う都心部での再開発の増加等に伴い、2011年下期以降「不足」の状況が続いている。2014年から2015年にかけて、建設投資の増加が一服し「過不足率」の不足幅は縮小したが、2016年以降、前述の再開発や、東京オリンピック・パラリンピック関連施設の建設が佳境に入り、再び不足幅が拡大している(図表1)。 深刻化する人手不足の影響を受け、不動産の新規供給と価格に大きな影響を及ぼす建築コストの上昇が続いている。建設物価調査会「建築費指数」によれば、「工事原価(SRC造)」の指数は、2013年以降上昇傾向にあり、2018年10月は前年同月比4%上昇した。(図表1)。 建設業就業者は、公共事業予算の抑制等に伴い1997年の685万人をピークに減少した後、2010年以降はほぼ横ばいで推移している(図表2)。2017年の建設業就業者は498万人となり、ピーク時の7割程度の水準である。一方、建設業就業者の内、若年層(30歳未満)の占める割合は低下傾向にあり、2017年は11%となった(全産業平均は16%)。建築業は、他の産業と比較して若年層が少なく高齢化が進んでいる。また、週休2日制の定着をはじめとした「働き方改革」の取組みが今後進むと考えると、建設業で人手不足が続く可能性は高い。 厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者は、2011年の69万人から2017年には128万人へと増加した(対2011年比86%増加)。人手不足が続く建設業でも、外国人の受け入れは拡大しており、建設業で働く外国人労働者は、2011年の1.3万人から2017年には5.5万人となり、約4.3倍に増加した(図表3)。若年層の建設業就業者が55万人に留まっていることと比較すると、外国人の存在感は高まっているといえる。この急増の背景には、建設業独自の外国人労働者の拡充対策である外国人建設就労者受入事業[2015年度~2020年度]がある。 この受入事業は、東京オリンピック関連の建設需要への対応を目的とし、「技能実習」を修了した外国人労働者を「特定活動」の在留資格で2年もしくは3年の期限付きで受け入れている。6年間で延べ7万人程度の受け入れを想定しているが、時限措置のため、新規受け入れは2020年度末で停止、2022年度末に制度が終了する。 ただし、2019年4月に出入国管理法等の改正1が施行されれば、外国人労働者を継続的に受け入れる体制が整う。特に若年層の減少が著しい地方を中心に、不足する人材を外国人労働者で補うことが期待される。 一方、これまでベトナム等から来日し建設業に従事した外国人労働者は、帰国後は語学力を生かし建設業以外の日系企業への就職を希望するものが多く、帰国後のキャリアとの連続性がみられないことや、SNSなどの発達により建設現場が厳しい労働環境であるとの認識が若年層の間で共有される2等、順調に受け入れが進まないリスクもある。 外国人労働者の受け入れ拡大は、深刻な人手不足の解消につながることが期待されている一方、受け入れ体制の整備や就労環境の改善等の課題が残っており、引き続き、これらの課題解決に積極的に対応していく必要があるだろう。 1 2つの在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを拡大する法改正。受け入れ業種は、特に人手不足が深刻な業種に限定されており、建設業のほか、介護業、宿泊業、外食業など14業種。 2 駒井 洋 (監修)、津崎 克彦 (編集)「産業構造の変化と外国人労働者」明石書店、2018 年5月、pp.48-65 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=60473?site=nli