大阪オフィス市場の現況と見通し(2019年)|ニッセイ基礎研究所
2019年3月13日 16時56分
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■要旨 大阪のオフィス市場では、まとまった空室を確保することが困難な状況が続いている。このような需給環境を反映し、成約賃料は上昇している。今後も、新規供給計画は限定的なことから、需給が逼迫した状況が続くと見込まれる。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2023年までの賃料予測を行った。 ■目次 1. はじめに 2. 大阪オフィス市場の現況   2-1. 空室率および賃料の動向   2-2. 需給動向   2-3. エリア別動向 3.大阪オフィス市場の見通し   3-1. 生産年齢人口の見通し   3-2. 新規供給見通し   3-3. 賃料見通し 1. はじめに 大阪のオフィス市場では、まとまった空室を確保することが困難な状況が続いている。このような需給環境を反映し、成約賃料は上昇している。今後も、新規供給計画は限定的なことから、需給が逼迫した状況が続くと見込まれる。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2023年までの賃料予測を行う。 2. 大阪オフィス市場の現況 2-1. 空室率および賃料の動向 全国主要都市の空室率は、いずれの都市も低下傾向で推移している。三幸エステートによると、大阪市の空室率(2018年12月時点)は3.3%となり、前年同月の4.7%から大幅に改善した。大阪のオフィス市場では、まとまった空室を確保することが困難な状況が続いている(図表1)。 大阪市の空室率を規模別にみると、全ての規模1で低下傾向が継続している。2018年12月時点の空室率は、全ての規模でファンドバブル期の水準を下回り、2000年以降の過去最低水準を更新した。特に、大規模ビルの空室率は、2016年以降急速に改善が進んでおり、1.7%まで低下した。(図表2)。 全国主要都市の成約賃料は、空室率の改善を背景に上昇が続いている。大阪市の成約賃料(2018年下期)も前期比+1.7%、前年同期比+2.9%の上昇となり、ファンドバブル期(2006年~2008年頃)の水準に回復した(図表3)。 2018年の空室率と成約賃料の変化を主要都市で比較すると、大阪市では、空室率が大きく改善した一方で、賃料の上昇は小幅に留まった(図表4)。 賃料と空室率の関係を表した大阪市の賃料サイクル2は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」局面が続いている。前述の通り、空室率は過去最低水準に低下し、成約賃料は、ファンドバブル期と同水準に回復したことで、市況のピークが見えはじめたことから、成約賃料の伸びがやや鈍化したと思われる(図表5)。 1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。 2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。 2-2. 需給動向 三鬼商事によると、大阪ビジネス地区では、2014年以降の新規供給が限られる中、築古オフィスビルの滅失は増えており、賃貸可能面積(総供給面積)は微増に留まっている(図表6)。 一方、賃貸面積(総需要面積)は2011年以降、8年連続で増加している。賃貸可能床面積は、8年間で7.7万坪の増加(212.4万坪⇒220.1万坪)であったの対し、賃貸面積は26.7万坪の増加(187.2万坪⇒213.9万坪)と大幅な増加となった。 月次の増減を確認しても、賃貸面積は、着実な増加を示しており、大阪のオフィス需要の底堅さが窺える(図表7)。 結果、2018年末の大阪ビジネス地区 の空室面積は6.2万坪(前年比▲1.9万坪)まで減少し、ファンドバブル期のボトムである9.4万坪(2007年末)を下回った。 大阪府の就業者数は、増加傾向で推移しており、2018年第四半期には449.2万人(対前年同期+10.9万人)に達した(図表8)。このような就業者の増加が大阪のオフィス需要を下支えしている。今後も、2025年の大阪万博開催の経済波及効果3への期待などから、就業者が更に増加することが見込まれる。 また、大阪府の2018年12月の有効求人倍率は1.77と、全国平均(1.63)を上回り、労働市場は逼迫した状況が続いている。人手不足が深刻化するなか、東京都心部の状況4と同じく、優秀な人材の確保を目的としたオフィス環境の改善に対する意識が高まっている。そのためには、一定程度の賃料負担を許容する企業が増えており、築浅の高機能ビルに対するニーズは強い。 また、優秀な人材を確保するために、働く場所に関して多様な選択肢を用意し、従業員の働きやすさを担保する動きも始まっている。コワーキングスペース大手のWeWorkは、2018年に竣工した「なんばSkyO(なんばスカイオ)」に拠点を開設した。オフィス需要の新たな担い手となる可能性もあり、今後の事業展開は注視したい。 3 経済産業省「大阪・関西における2025年国際博覧会の開催に向けて」によれば、大阪万博の入場者は約2,800万人、経済波及効果は約2兆円と試算されている。 4 吉田資「東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2019年)」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2019年2月15日 2-3. エリア別動向 2018年末時点で最も賃貸可能面積が集積しているエリアは、「梅田地区(34.5%)」で、次いで「淀屋橋・本町地区(30.8%)」、「船場地区(15.0%)」、「新大阪地区(9.7%)」、「心斎橋・難波地区(5.1%)」、「南森町地区(5.0%)」の順となっている(図表9)。 2018年は「なんばSkyO(なんばスカイオ)」の竣工により、「心斎橋・難波地区」で賃貸可能面積が1.0坪増加した。一方、滅失等により「淀屋橋・本町地区」(▲0.4万坪)や「梅田地区」(▲0.2万坪)、「南森地区」(▲0.1万坪)では減少した(図表10)。 賃貸面積は、「心斎橋・難波地区」(+1.0万坪)や「淀屋橋・本町地区」(+0.7万坪)、「船場地区」(+0.5万坪)で増加した。この結果、空室面積は、「淀屋橋・本町地区」(▲1.1万坪)や「船場地区」(▲0.5万坪)をはじめとして、「心斎橋・難波地区」を除く全ての地区で減少した。 大阪の空室率をエリア別にみると、2018年は「心斎橋・難波地区」を除くすべての地区において、低下基調で推移した(図表11左図)。特に、「淀屋橋・本町地区」の空室率(2018年12月時点)は2.4%となり、2002年以降で過去最低水準まで低下した。一方、「心斎橋・難波地区」は「なんばSkyO」が竣工した影響等で2018年9月に空室率が大きく上昇したが、その後は改善にむかっている。 また、募集賃料をエリア別にみると、「梅田地区」・「淀屋橋・本町地区」・「船場地区」の賃料は2017年初から上昇基調に転じている。2018年に入り、その他の地区でも(「南森町地区」・「新大阪地区」・「心斎橋・難波地区」)賃料は上昇に転じ、すべての地区で賃料は上昇局面に入った(図表11右図)。 3. 大阪オフィス市場の見通し 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によると、大阪市の生産年齢人口(15~64歳人口)は2015年(171万人)から2015年(170万人)にかけてほぼ同水準で推移した後、2020年以降に本格的に減少すると予測されている(図表12)。ただし、大阪市「大阪市の推計人口年報」によれば、2018年の生産年齢人口は173万人となり、2015年から増加している。 生産年齢人口の増加を支えている要因の1つは、大阪市中心部への旺盛な人口流入である。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、大阪市の転入超過数5は2000年以降、増加傾向で推移している。2018年の大阪市の転入超過数は+13,796人(前年比+3,105人)と、他の主要都市と比較しても人口流入が高水準であることがわかる(図表13)。一方、大阪圏(大阪府,兵庫県,京都府,奈良県)の転入超過数は、▲7,907人と人口流出が続いている。大阪圏では、人口が大阪市に一極集中する傾向が続いている(図表14)。 以上の状況を鑑みると、今後5年間で大阪市のオフィスワーカー数が大幅に減少する懸念は小さく、引き続き、大阪のオフィス需要は底堅いと見込む。 5 転入超過数=転入人口-転出人口 3-2. 新規供給見通し 大阪のオフィスビル新規供給量は、「グランフロント大阪」や「ダイビル本館」等が竣工し、高水準となった2013年(約6.0万坪)以降、限定的な状況が続いている。2018年の新規供給量は約1.5万坪となり、「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」等が竣工した2017年の新規供給量(約2.5万坪)を下回った(図表15)。 今後3年間の大規模ビルの新規供給(2019年~2021年)も、「オービック御堂筋ビル」や「新サンケイビル建替プロジェクト」等に限定されており、大阪市では低水準の新規供給状況が続くと見込まれる。 大阪の過去5年間の新規供給面積が総ストックに占める割合は、2.6%であった。主要都市と比較すると、仙台市(1.1%)と福岡市(2.5%)に次いで小さい(図表-8)。過去10年間でみても新規供給面積の割合も約1割に留まっており、築浅オフィスビルの希少性が高い状況が続くと思われる(図表16)。 ただし、2022年以降、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(大阪神ビルディングと新阪急ビルの一体建替)や「梅田3丁目計画」(大阪中央郵便局と大弘ビル跡地)、「うめきた2期」等、梅田駅周辺で複数の大規模開発が計画されている。新規供給量は大きく増加すると見込まれ、需給バランスを注視する必要があるだろう。 3-3. 賃料見通し 前述の新規供給見通しや経済予測6、生産年齢人口の見通しを前提に、2023年までの大阪のオフィス賃料を予測した(図表17)。 大阪の空室率は、2021年まで新規供給が限定的なこともあり、当面の間、極めて低い水準を維持すると見込まれる。2022年以降は、梅田駅周辺で複数の大規模開発が計画されていることから、空室率は上昇するが、底堅い需要に支えられ大幅な上昇には至らないと思われる。 大阪のオフィス賃料は、逼迫した需給状況を反映し、当面の間、上昇が続くと予想される。2018年の賃料を100とした場合、2019年の賃料は104、2020年は108と堅調に上昇する見通しだ。 2021年以降は、東京五輪開催後の経済の落ち込みや梅田駅周辺の大規模開発を控えて空室率が上昇する影響を受け、賃料の伸びは鈍化すると見込む。成約賃料は2021年から2023年にかけてほぼ横ばい圏で推移すると予想する。 6 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2018~2028年度)」ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2018年10月12日、斎藤太郎「2018~2020年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定」ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2018年12月10日などを基に設定。 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61049?site=nli