【不動産ニュース】水防法の整備-近年の水災をふまえた状況~災害・防災、ときどき保険(8)|ニッセイ基礎研究所
2019年6月15日 11時00分
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■要旨 洪水等を警戒・防御し、被害を軽減する体制を整備するものが水防法である。この中では、市町村・都道府県などの地方自治体や水防団などの活動につき規定されている。近年、豪雨などによる甚大な水災を受けた経験などを踏まえ、ハザードマップの改定や自治体間の連携を密にする組織を新設する方向で水防法が改定され、さらなる整備が進められているところである。 ■目次 1――水防法、のまえに・・・ 2――水防法   1|水防法の内容 3――最近の改正(=進展)   1|平成27(2015)年の改正~ハザードマップの拡充   2|平成29(2017)年の改正~大規模氾濫減災協議会の設置 1――水防法、のまえに・・・ 昨年2018年夏も、大雨による洪水などの水災が各地で起こった。そのひとつは筆者の出身地(岡山県)だったので、帰省のおりに、被害・不便を被った何人かに会った。その中で印象的だった感想は「まだ避難命令がでてなかったから、大丈夫だと思った。」である。どうやら、「避難指示」を超えて、いよいよ危険が迫ると最後には「避難命令」が出るものと思っていたようだ。「いや、少なくとも日本には避難命令というやり方は法律上なくて、避難指示が最大の警告1」と、こうした防災関係の記事を書くにあたって仕入れた知識を説明しておいたが、次の災害シーズンには生かされるだろうか。もちろん、本来は役立つような事態に出会わないのが一番いいに決まっているが、防災そのものが、そもそも縁起でもないことを日頃から想定しておくべきものである。(ついでに万一の際の保険というものも。) さて、水に関連する自然現象やその災害の種類としては、洪水、津波・高潮をすぐに思いつく。似てはいるが少し事態が違うものとして、「雨水出水」というのもある。これは、「一時的に大量の降雨が生じた場合において下水道その他の排水施設に当該雨水を排除できないこと又は下水道その他の排水施設からその他の公共の水域若しくは海域に当該雨水を排除できないことによる出水」と「水防法」第2条にある。ということで雨水出水とは自然現象そのものではなく人工の排水施設の不都合、というようなものであろう。 今回はここに出てきた水防法という法律をきっかけにして、これら水災への対応全般を見てみる。この辺は近年の豪雨災害の甚大化を受けて、特に整備が進められつつある仕組みのようである。 1 2017年1月から、こうした避難情報は「避難準備・高齢者等避難開始」→「避難勧告」→「避難指示(緊急)」の順に、緊急性や避難の強制力が高くなっている。ただし、いつもこの順を追うとは限らず、急に緊急性の高い避難情報が出ることもあることに注意。 2――水防法 1|水防法の内容 水防法は1949年に制定された法律で、その目的は、洪水、雨水出水、津波・高潮に際して、水災を警戒し、防御し、被害を軽減し、公共の安全を保持するということにある。(水防法第1条) そのための組織と活動については、基本的には市町村が水防の責任をもつということになっている(水防法第3条)。しかし、地形の状況により、市町村が単独で責任を果たすことが困難または不適当である場合には、複数の関係市町村が、対象区域を定めた上で「水防事務組合」を設けなければならない(水防法第3条の2)。 さらに広域となる都道府県は、「その区域における水防管理団体(市町村、水防事務組合など)が行う水防が十分に行われるように確保すべき責任を有する」とあり(第3条の6)、ひとつの市町村だけにとどまらない状況下における水防の責任があるということになる。また水防上公共の安全に重大な関係のある水防管理団体を指定するのも都道府県知事である(水防法第4条)。 また、水防管理団体は「水防団」をおくことができる(水防法第5条)。 「消防団」なら前回2見たところであるが、水防団というのは聞き慣れない言葉かもしれない。消防団は、消火活動や救助活動とともに、水防活動も行えることになっているので、その地域に消防団があれば、水防団は必要ない。しかし、水防管理団体が、その区域内にある消防機関が水防事務を十分に処理することができないと認める場合には、水防管理団体の義務として、水防団をおかなければならない、とされている(水防法第5~6条)。 さて、都道府県は、毎年水防計画を立て必要に応じて変更する義務があり(水防法第7条)、水防計画等の調査審議のための「都道府県水防協議会」をおくことができる(水防法第8条)。 実際の水防活動の種類には、以下のようなものがある。 水防団等は、河川・海岸堤防・津波防護施設等の巡視を行い、危険と認められるときは必要な措置を管理者に求める(水防法第9条)。 気象庁は洪水・津波または高潮の恐れがあるときは、国土交通大臣と都道府県知事に通知し、報道機関に協力を求めて周知させなければならない。 国・都道府県それぞれの役割として洪水予報や河川や高潮の水位の通報・公表を行うべきこととされている。(水防法第9~13条)。 例えば「洪水予報河川」(流域面積が大きい河川で、洪水により国民経済上重大な損害が生ずるおそれがあるものとして、国土交通大臣または都道府県知事が指定した河川(水防法第10~11条))については、洪水のおそれがあるときは水位または流量等を示して、河川の状況を水防管理者に通知する。有る程度大きな河川はほとんどこれに該当する。 また、「水位周知河川」(洪水予報河川以外で、洪水により国民経済上重大な損害が生ずるおそれがあるものとして、国土交通大臣または都道府県知事が指定した河川(水防法第13条))については、特別警戒水位を定め、河川の水位がこれに達したときは水防管理者に通知する。(これは洪水予報河川より少し規模が小さいイメージか。) また、国や都道府県は、重大な損害を生ずるおそれのある河川について、事前に「洪水浸水想定区域」を定めて(水防法第14条)、迅速な避難経路の確保や浸水の防止、災害の軽減に役立てることになっている。これは最近改正されたので改めて次に述べる。 2 「消防団など~災害・防災、ときどき保険(7)」2018.4.18 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58476?site=nli 3――最近の改正(=進展) 1|平成27(2015)年の改正~ハザードマップの拡充 すぐ上に述べたように、事前に洪水等の浸水想定区域を定めて、対策を講じる必要があるのだが、以前の水防法では、洪水に係る浸水想定区域の基準を、「河川整備において基本となる降雨」を前提とした区域、とされていた。それをさらに拡充して「想定しうる最大規模の降雨」を前提とした区域と改めた(平成27年改正後の水防法第14条)。いわば平均的な降雨ではなく、最大に心配な大雨に備えた対応が可能となるように見直された。 この中で示される内容は3、従来「浸水区域」、「浸水深」のみだったものが、さらに「浸水継続時間」や「家屋倒壊等氾濫指定区域」が追加された。また避難行動に直結するようなハザードマップは、それぞれの自治体等が作成することになるのだが、そのガイドラインとしての「水害ハザードマップ作成の手引き」は2016年4月に改定されている。 3「平成27年及び平成29年の水防法改正に関連する施策の推進について」2018.6.8 国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 2|平成29(2017)年の改正~大規模氾濫減災協議会の設置 浸水想定区域における円滑で迅速な避難や浸水防止の措置については、従来、市町村を中心とした自治体レベルで、洪水予報、避難施設・避難経路等の整備、避難訓練の実施、地下街や要配慮者利用施設(社会福祉施設、学校、医療施設等)など特に配慮すべき場所の日頃の備えや計画について、定められていた(水防法第15条など)。 ところが、平成27(2015)年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川の決壊など大規模な氾濫が起こり、的確な避難勧告の発令や広域避難体制の必要性など課題が明らかになった。これに対応するために、地方公共団体や河川管理者などの多くの関係者が密接な連携体制を構築しておくことが必要とされ、水防法のなかで、平成29(2017)年に新規に規定されたのが、「大規模氾濫減災協議会」の設置である。(水防法第15条の9) これは、地方公共団体や、河川管理者、水防管理者等の多くの関係者が、あらかじめ密接な連携体制を作っておく、という考え方のもと、「大規模氾濫減災協議会」を、先に紹介した洪水予報河川、水位周知河川(特に(都道府県ではなく)国が管理する河川は必須)を対象に組織することとし、それより小規模の都道府県管理河川については実情を踏まえ組織できる。とはいうものの、いずれ全ての河川について当協議会をつくることが望ましいとされている。 取り組み内容については、関係機関がタイムライン、ホットラインなどの洪水対策を実施し、水害対応タイムラインの検証訓練、出水時対応について情報を共有する会議の実施、などが挙げられている。 しかし、災害はこうした新しい取り組みが軌道に乗るのを待ってくれない。昨年、平成30年7月豪雨で西日本を中心に大きな被害が発生した(その時の地元での感想が冒頭で述べたところである。)。確かに各自治体で「大規模氾濫減災協議会」が設立され、やっと動き出していた矢先だったようである。国土交通省により示された取り組みスケジュールにおいても、2018年の出水期までを目処に全ての河川においてこの協議会を組織し、取り組み方針を取りまとめ、その後数年にわたってフォローアップ・追加・修正をしていくことになっているが、少し間に合わなかったところもあったということか。しかし災害はこれからも起こりうるので、整備された諸制度が将来にむけて減災に役立つことを大いに期待したいところである。 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61618?site=nli