【不動産ニュース】人口減少社会データ解説「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」(上)-10年間エリア子ども人口の増減、都道府県出生率と相関ならず-|ニッセイ基礎研究所
2019年6月29日 09時00分
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■要旨 2015年(実績値)と2045年(推計値)の人口比較において101%の増加に転じた東京都人口。 この東京都の次世代人口の鍵を握るのが、東京都の子ども人口である。 2005年との比較において2015年の東京都子ども人口は、10年間で107%に増加した。 全国的に見ると、長期にわたり最低出生率を続ける東京都のイメージとは、まるでかけ離れた子ども人口の育成構造である。 この東京都における次世代人口の育成構造を、当レポートではシリーズにて統計的に解説する。 ■目次 はじめに-30年後も沈まぬ人口数 1――都道府県出生率と都道府県子ども人口の関係性の強さは? 2――子ども人口計算式のもう1つの要因の影響力は? 3――「子育て支援」政策効果を揺るがす、女性人口の流出 はじめに-30年後も沈まぬ人口数 少子化対策が叫ばれる日本において、都道府県別に将来人口(2045年)推計結果を見るならば、いまだ少子化対策がまるで必要ないかのように見えるエリアがある(図表1)。 2015年国勢調査結果をもとに導き出された都道府県別地域人口の将来推計では、2010年の結果をベースにした前回推計結果とは異なり、東京都の2045年推計人口だけが100%超のプラスに転じた。 東京都は全国最低水準の合計特殊出生率(以下、出生率)エリアとして知られ、地方では「東京都では、出生率の高い地方より子どもは減っている」「東京都こそ、もっとも少子化している」と考えている人々も少なくない。「東京都の子ども対策こそ、少子化対策の手本」といったような見方さえされかねない状況も見られている。地元からの東京都への人口流出は把握しているものの、それは東京都への大人(労働)人口流出の話であり、東京都の子ども人口に関しては、全国最低の出生率であるから減っているはずだ、という考えに立脚しているようである。 しかしながら、東京都における国勢調査ごとの過去の子ども人口推移を追ってみると、2005年から2015年の10年間で、0~14歳の子ども人口がイメージとは逆に107%の増加に転じている(図表2)。1990年から2015年の25年間においては、東京都は全国1位の子ども人口維持率ではあるものの、まだ減少傾向(87.9%)であったことから(「データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(2)~子ども人口シリーズ 四半世紀・25年間でみた子ども人口の推移」参照)、近年、東京都の子ども人口の維持力が、子ども人口推移がプラスに転じるほど増強されたことが読みとれる。 1995年以降、出生率が長期に1.5を切り続ける長期「超低出生率国」の日本において、子ども人口維持力を増強しつつある姿がデータから浮かび上がり始めた東京都。 本レポートではシリーズで、その状況が一体何を「力の源」とし、さらに、その力は何によって決定されているのかを詳らかにしていきたい。 1――都道府県出生率と都道府県子ども人口の関係性の強さは? まず、東京都が子ども人口増加に転じた2005年~2015年における、各都道府県の出生率の10年間の状況をみてみたい(図表3)。 地方において(東京においても)、「東京都はさすがに一番子どもが減っているだろう」と思われる根拠として考えられがちな東京都の超低水準な出生率状況が示されている。ちなみに、図表からは沖縄県と東京都の出生率が目立って高位と低位で推移していることがわかる。 直感的、視覚的にみて、各都道府県における10年間の子ども人口の変化の図表(図表2)と10年間の出生率の状況の図表がつながらない(図表3)。10年もの間、全国最低出生率で推移した東京都において、最も子ども人口増加率が高いからである。 そこで、この2つの都道府県データ(10年間の子ども人口の変化と出生率の推移)の関係性の強弱を相関分析で確認してみることとする。 ここで、各都道府県の10年間の出生率は、2005年~2014年の各年の出生率の単純合計を10で割った平均値とする。子ども人口増減は、2015年子ども人口を2005年の子ども人口で割った値とする。これによって、各都道府県の10年間の合計特殊出生率の平均的な高低と子ども人口の10年間での増減が、どの程度かかわりを持っていたかを分析することが出来る。 分析の結果、相関係数は-0.101であり「両データ間には、ほぼ関係性がみられない」という結果となった。都道府県の10年間にわたるそれぞれの出生率の相対的な高さ、もしくは低さが、都道府県それぞれの10年間の子ども人口の相対的な増減度合いに反映していない、ということになる。 つまり、出生率の高低を比較することによって、各都道府県の子ども人口増加政策(少子化対策)の成果の多寡をうかがい知ることはできない状況である、ということである。 2――子ども人口計算式のもう1つの要因の影響力は? 基礎研レポート「データで見る「エリア出生率比較」政策の落とし穴-超少子化社会データ解説-エリアKGI/KPIは「出生率」ではなく「子ども人口実数」」において、エリアの子ども人口は A<エリアの母親候補の数> × B<出生率> = エリアで生まれる子どもの数 という計算式で算出されることを解説した1。その中で、B<出生率>の高低が、必ずしもエリアの子ども人口増減率の高低の主要因とはならない、ということを示した。 そこで当レポートでは、2005年の国勢調査から2015年の国勢調査の間の10年間におけるもう1つの指標、A<エリアの母親候補の数>について、同期間の子ども人口増減への影響力を計量的にみてみたい。もともとのエリア女性人口を変化させ、エリアの母親候補数に影響をもたらす「女性の都道府県間移動(社会移動)」による10年間の女性社会増減数と、都道府県子ども人口増減率との関係性を示したものが次のグラフである(図表5)。 都道府県ごとの子ども人口増減率と女性人口社会増減数の関係を示した最初のグラフからは、東京都が突出して外れた位置(外れ値)にあることがみてとれる。そこで、「東京都以外の」道府県傾向だけもみるために、東京都を外した下のグラフも作成した。 その結果、東京都をいれてもいれなくても、データの傾向に変化はほぼなかった。いずれにしても、女性人口の社会増減と子ども人口増減の間には、強い相関関係(依存関係)があることが判明した。 つまり統計的には、2015年までの10年間の都道府県の子ども人口は「出生率の高低」ではなく、「そのエリアの女性人口社会増減」と強く関係していた、ということが示されたのである。もっというと、出生率の高低による影響を女性人口の社会移動が打ち消してしまっている、ということになる。 1 出生率(合計特殊出生率)は、そのエリアの15歳から49歳の未婚・既婚問わず全ての女性の出生力を表す指標であり、「夫婦のもつ子どもの数ではない」ことを確認しておきたい。 既婚女性に対して「3人産むようになればいい」は、あくまで既婚者出生率の議論であり、未婚化が進むことによって生じる出生率ほぼ0グループの増加による少子化、という概念が欠落して起こる発言である。 実際、日本の夫婦が最終的に持つ子ども数はほぼ2人で長期推移しており、日本の少子化は未婚化の影響が大きいことがわかっている。 3――「子育て支援」政策効果を揺るがす、女性人口の流出 都道府県ごとの子ども人口の増減率の行方を決める「女性人口の社会移動」。女性の社会流出が継続的に生じている状況下では、子ども人口増加を目標とした都道府県の「子育て支援策」の効果は大きく希釈、または無効化されてしまう。そのメカニズムは、次のチャートを参照されたい(図表6)。 あるエリアXに子どもが生まれくるためには、4つのステップが必須である。 各都道府県が掲げる「子育て支援」政策は、「子育て」へのアプローチのため、あくまでもチャート図の「ステップ3以降への働きかけ」となる2。 最新の国勢調査が実施された2015年における女性の平均初婚年齢はすでに29.4歳まで上昇している(しかも年々上昇傾向にある)ので、平均的に見て、妊娠期間を考慮に入れると、子育て支援政策は主に30歳以降の女性に対して働きかける(効果の出やすい)政策となりつつある、ということになる。 もし、エリアXにおいて、いわゆる「アラサー前の段階」(平均初婚年齢から考えて主にステップ1の段階)で女性が多く社会流出してしまうとすると、自治体のせっかくの子育て支援政策をそのエリアで生まれ育った女性が享受する前に、そのエリアから消えてしまうことになる。 つまり、子育て支援政策効果が十分に発揮される前に、そもそもの政策のターゲットが消えていく(ゼロに何をかけてもゼロ)ということである。地方における子育て支援策が、関東エリアにおけるそれと同様の子ども人口への効果を示せない理由はそこにある。 「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」レポートの次号では、都道府県の子ども人口増減(東京都の子ども人口の増加、地方の子ども人口の減少)に、統計的にみると多大な影響を及ぼしていることが判明した「エリア女性人口の社会移動」が、実際どのように都道府県間で起こっているのか、見ていくこととしたい。 2 子育て世帯の誘致によって子ども人口を変化させる政策については、このシリーズにおいて別途解説。 【参考文献一覧】 国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」 厚生労働省.「人口動態調査」 国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」 総務省総計局. 「国勢調査」 国立社会保障人口問題研究所.「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」 天野 馨南子.“データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(上・流入編)-地方の人口流出は阻止されるのか-”ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年8月6日号 天野 馨南子.“データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(下・流出編)-人口デッドエンド化する東京の姿-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年8月13日号 天野 馨南子.“データで見る「エリア出生率比較」政策の落とし穴-超少子化社会データ解説-エリアKGI/KPIは「出生率」ではなく「子ども人口実数」” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2019年4月22日号 天野 馨南子.“データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2019年4月26日 天野 馨南子.“データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(2)~子ども人口シリーズ 四半世紀・25年間でみた子ども人口の推移” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2019年5月13日 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61754?site=nli